2004.9.30-10.8
シカゴ旅行


The Devil in the White City の舞台を訪ねてシカゴへ行ってきました。


9月30日(木)。ユナイテッド・エアでシカゴ、オヘア空港に到着。タクシーで市内へ。初日から3日間はホテル・バーナムに宿泊。このホテルのあるリライアンス・ビルは、ごく初期のスカイスクレーパーである。オリジナルの4階までがバーナム&ルート設計事務所の作。

バーナムホテルの寝室。ヘッドボードは紺色のビロード張り。贅沢な内装だが、部屋はやや狭い。クイーンサイズのダブルベッドはスプリングがききすぎて、寝返りをうつと弾んでしまう。ちょっときゅうくつだった。


1階にあるアトウッド・カフェ。ジョン・ルート亡き後、ダニエル・バーナムの右腕となった建築家チャールズ・アトウッドにちなむ。装飾スタイルはアールデコ。シャンデリアや赤とグリーンの柱がきれいだった。

アトウッド・カフェでの朝食3種類。フルーツサラダ。イチゴとブドウとメロン。前日のベーコンエッグ、ポテト、トーストの量にめげて、この日はフルーツサラダのみ。

ベーグルにクリームチーズとスモークサーモン、タマネギ、ケーパー載せ。おいしいけど、ちょっと量が多い。おなかいっぱい。


卵の白身オムレツ、フルーツ添え、イングリッシュ・マフィン。オムレツにはカテージチーズが載せてある。アトウッドカフェのシェフはチーズが好きらしく、ステーキもゴルゴンゾーラソース、フライドオニオン添え(ステーキの上に山盛り)だった。


10月1日(金)翌日はさっそく1893年のコロンビア博覧会の跡地に出かける。現在はジャクソン・パーク。シカゴ大学のキャンパスとなっている。だだっ広くて、博覧会の名残は、この自然科学博物館のみ。もとは万博パビリオンの芸術館として使われた建物。ほかの建物はすべて火災で焼けたり、取り壊されたりして、いまは残っていない。


景観設計はNYセントラルパークの設計を手がけたF・R・オームステッドによる。自然のままに見せる景観を重んじ、この〈ウッデッド・アイランド〉(森の島)にも葦や水草や樹木を植えて、見たところ人の手が入っていないような感じに造形したという。万博では、この島に鳳凰殿を模した日本館が建てられた。


万博の名残の彫像。金色に輝く像は、管理棟のドームを通ってすぐ、人工池の中に噴水と向き合って立っていた。


同行の友人のリクエストで、世界最大のティラノザウルス骨格標本スーを見るため、タクシーで近くのフィールズ博物館へ。実物だと重すぎて支えられないため、頭だけレプリカなんだって。


円柱が並ぶ入口にはスーのシルエットが飾られていた。このデザインはおしゃれ。昼食は博物館のコーナー・ベーカリーでトマトスープとサンドイッチ。スープには袋入りのポテトチップスがついてくる。思ったより寒いので、このあとデパートのマーシャル・フィールズへ行って着るものや靴などを買う。ミントチョコもね。


10月2日(土)リバークルーズの船に乗ろうと、ぶらぶら川のほうへ歩いていたら、ちょうど橋が開くところだった。背景に見えるのは、ツインタワーのコンドミニアム。丸い形がトウモロコシの穂に似ているので、コーンタワーとも呼ばれる。とてもユニークな形の建物。

シカゴ川クルーズに乗船。立っているのがガイドさん。早口でちょっと理解しにくい英語だった。いろいろなビルを見ながら1時間ほど川をめぐる。川風で寒かった。

ノースサイドからダウンタウンをめぐり、南のほうのプリンターズロウあたりへ行くと、シアーズタワーが見える。おじさんの頭が……

ボートから眺めたグッドアングルのシアーズタワー。シカゴで一番高い。世界では2番目。今回、展望台へは昇らなかった。クルーズでは他にも建築物の写真をどっさり撮ったのだが、ガイドブックにたくさん出ているので、ここではカット。


2日の夜はシカゴ・リリック・オペラへ。7時半開演。演目はワーグナーの『ラインゴールド』、チケットは日本からインターネットで予約し、30分前にボックスオフィスで受けとる。ヴォータンはジェームズ・モリス。光やカーテンを使った演出が面白い。ラインの娘たちがワイア−アクションをこなしているのにビックリ(歌手ではない)。

10月3日(日)ホテルをチェックアウトして、ノースサイドのB&B、Flemish House of Chicagoに移る。マイクとトムという男性2人の経営で、古い建物がきれいに改修してある。


3階の中庭側の部屋で、セミダブルサイズのツインベッドが2つ、キッチンは冷蔵庫、電子レンジ、トースター、鍋や食器もそろっていて自炊ができる。廊下をはさんでバスルームとクローゼット。広々としていて、清潔で、とても快適。インターネットは無線LANで接続できた。


毎日冷蔵庫にマフィン、オレンジジュース、ミルク、ヨーグルトなどを入れておいてくれるので、セルフサービスでコンチネンタル・ブレックファーストが食べられる。奥がキッチン。


バナナ、マフィン、パウンドケーキ、箱入シリアル、ジャムなど。コーヒーはコーヒーメーカーで。


このB&Bにはネコが2匹いる。その1匹タミーと廊下で遊ぶ。


シカゴ市内をめぐるグレイハウンドのトロリーツアーに乗ってみる。ドライバーがガイドを兼ねて説明してくれる。禿頭でしゃがれ声のおっちゃんだったが、クルーズのガイドさんよりはわかりやすい英語。シカゴトリビューン前から乗って、一巡して戻ってくる。


バスの窓から、ミシガン湖のハーバーをのぞむ。空は晴れ渡り、とてもいい天気。ヨットがたくさん。

シカゴトリビューン・ビルのウィンドウに飾ってあったテディ・ベア。トリビューン・テディ。街のあちこちでテディ・ベアを見かけたんだけど、ハロウィーンだからなの? それとも、季節に関係なく、オールタイムの人気グッズなのかな。


シカゴトリビューン前から、デパートやブランドショップが建ち並ぶマグニフィーセント・マイルを北に向かって歩き、シカゴ第2の高さを誇るジョン・ハンコック・センターへ。95階のシグニチャー・ラウンジでビールを飲む。ツーリストが多くて、あまり気取っていないのがいい。


上から見たシカゴの街の風景はすごくきれいだった。高さとか、広さとか、単純なものに強いインパクトがある。さすが。南のほうを見たところ。

これも95階から、北の方向。ミシガン湖に突き出た砂洲のような岬が見える。くっきりと地面に落ちる影もきれいだった。


10月4日(月)シカゴ建築センターのウォーキング・ツアーに参加。11時発のヒストリカル・スカイスクレパー・ツアー。7人くらいでぞろぞろと街を歩く。シカゴ大火後、19世紀半ばから20世紀初頭の代表的な建築物を見てまわる。このツアーでもビルの写真をたくさん撮ったのだが、それも省略。

ガイドをしてくれたフランク。街かどで立ち止まって、説明をしてくれる。

バーナム&ルート設計事務所が最上階にあったルッカリービルの壁のレリーフ。修復用の足場でわかりにくいが、カラスが描かれているのがわかるかな? ルッカリーとは「カラスの巣」の意味。


このビルには正式な名称があったのだが、みんながルッカリーという愛称で呼びつづけたため、それが定着しちゃったんだそうだ。回転扉のあるロビーの絨毯にRookeryと書いてある。


ルッカリーのホール。天窓のガラスから光が入る。この内装はもとはジョン・ルートによるものだったが、のちにF・L・ライトが改装し、より明るく軽く、モダンになった。白い壁と金色の装飾が優雅。弧を描く階段もすてき。


ツアーのあと、近所のコーヒーショップでホットドッグのランチ。ソーセージが太すぎて、パンではさめない!


シカゴ名物〈エル〉=高架鉄道。ERにもよく出てくる公共交通機関。昔の山手線という感じ。映画『あなたが寝てる間に』では、サンドラ・ブロックがこの駅の出札係をしていて、ホームから線路に落ちたエリートサラリーマンを助け、昏睡状態になった彼の婚約者だと誤解されて……というラブコメディだった。彼の住む高級コンドミニアムと身寄りのない彼女の住む下町のアパートとが、いかにもシカゴらしいコントラストを見せていた。


そのCTAに乗って、北のほうにあるグレースランド墓地へ。バーナムやルートの墓がある。ルイス・サリヴァン、ミース・ファン・デル・ローエの墓も。バーナムのお墓の前で記念写真。お墓に供えるお花をもってくるはずが、買いそびれてしまった。


これもシカゴ名物、リグレー球場。エルの窓から撮影。チューインガムで財をなしたリグレー一族が築いた野球場。「嘘だといってよジョー」のシューレス・ジョーで有名なシカゴ・ホワイトソックスの本拠地(だよね? 野球は詳しくない)。


10月5日(火)またもやCTAに乗って、今度は西の郊外にあるオークパークへ。フランク・ロイド・ライトの私邸&スタジオが見学できる。この写真は庭にある銀杏の大木。これにちなんで、ライト私邸に付属したガイドセンター&ショップはギンコ・ショップと呼ばれている。雌の木で、銀杏がいっぱい落ちていた。


ライトが結婚して最初に住んだ私邸。もちろん設計はライト自身。6人の子供用に作った遊戯室がすごく豪華だった。中は写真撮影不可。ガイドツアーに参加しないと内部は見られない。


充実したツアーを終えて、周辺のライト設計の家並みを見る前に腹ごしらえ。近所のコーヒーショップでバーガーとダイエットコーク。このハンバーガーはバンズがかりっと焼けていて、お肉もジューシー。とてもおいしかった。ショップの人に教えてもらった店なのだが、名前を忘れた。ピーターソンズだったかな?


ライトの設計による、水平のラインを生かした家。ヴィクトリア時代の家にくらべると、機能性を重視してよけいな装飾を排したモダンさがきわだつ。が、かなり贅沢な作りではある。レンガの色を変えて筋の模様に見せたり、採光をよくするためのガラス窓もただの板ガラスではなく、地紋入りだったり。


これもライトによるユニティ・チャーチの礼拝堂内部。ここにも水平線のパターンとガラス窓によるたっぷりした採光の工夫が見られる。

10月6日(水)シカゴ滞在最後の日なので、シカゴ美術館へ。有名な『アメリカン・ゴシック』。モデルになったのは女性が画家の妹、男性がかかりつけの歯科医なんだって。


ジョージア・オキーフはアート・インスティテュート・オブ・シカゴ(美術学校)で学んだので、ここにはオキーフルームがある。当時、女性に職業としての美術訓練をする学校は数少なかった。オキーフは自活するため、手に職をつけようとこの学校へきた。学費がないため、1年でやめて、テキスタイルのデザイン職人として働いたあと、NYの学校へ行きなおして、やがてテキサスで美術教師の職についた。


美術館のカフェでランチ。ローストビーフにピラフと煮野菜のつけあわせ。


最後の夜はシカゴ名物、スタッフド・ピザを食べに行く。マイク&トムお薦めのジョルダーノズ。ピザを焼くのに30分くらいかかるので、先にリストに名前を書いておき、このレジでピザだけ注文してバーで待つ。席があくと、名前がアナウンスされてテーブルに着き、その他の料理やお酒の追加を注文する、というシステム


チーズにフレッシュトマトとペパロニのトッピングを選んだスモールサイズのスタッフド・ピザ。これに野菜サラダとバドライト(ビール)。2切れ食べたらおなかいっぱい。


10月7日(木)最終日の朝。すぐそばにあるゴールドコーストのビーチまで散歩に出かけた。ジョギングやサイクリングをしている人が大勢。このランプをくぐると……


……そこは海(ほんとは湖)。夏は海水浴ができる。カモメが砂山の上で羽根を休めていて、とてもピースフル。


ビーチに立って振り向くと、そこには摩天楼のスカイライン。アンテナのある黒いビルがジョン・ハンコック・センター。


最後にミシガン湖岸で記念写真。このあとタクシーでオヘア空港へ向かい、12時間の飛行機という苦痛を耐えて、やっと無事東京に帰着。お疲れさまでした。

牧人舎ホームページのエッセイ【シカゴで考えたこと】はここをクリック

『ホワイトシティの悪魔』(エリック・ラーソン著、文藝春秋、来年刊行予定)は1893年のシカゴ万博の設計部門総責任者だったダニエル・バーナムはじめ、博覧会にかかわったさまざまな登場人物の挫折と成功を追ったストーリー。それと並行して、この博覧会をえさに大勢の若い女性を殺害したシリアル・キラー、H・H・ホームズの犯罪が描かれる。一種の群像劇であり、またシカゴの街そのものが主人公でもある。「事実は小説より奇なり」のとても面白いノンフィクションです。