牧人舎【日々の泡】塩原通緒2004
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日々の泡

塩原通緒(2004.1)

新年あけましておめでとうございます。

みなさま年末年始はいかが過ごされたでしょうか。
大晦日のテレビ番組は、曙VSボブ・サップ戦の視聴率が紅白歌合戦を上回ったそうですね。裏番組が一瞬でも紅白に勝ったのは史上初めてだとか。そして紅白は大トリのSMAPでふたたび盛り返し、視聴率五〇パーセントを上回ったとのこと。私の視聴行動をそっくり反映していて、なんだか恥ずかしゅうございます。その後はさらにくだらない民放某局のカウントダウンを眺めつつ、こうしてぬくぬくと過ごせる呑気な生活のありがたさを噛みしめながら、2004年を迎えました。家の裏の神社に初詣に行って、親戚に年始のご挨拶に出かけ、雑用を片づけていたら、正月休みはあっというまに終わりました。昨年は中途半端で放り出していたものが多々ありましたが、今年はしゃきっと生活を整えなおしたいと思います。

この連載もいつのまにか五年目に突入ですね。最近、継続の難しさがいろいろな局面で実感されます。管理人のみなさん、読んでくださっているみなさんに、あらためて感謝申し上げます。これからもどうぞよろしくお願いします。

(しおばら みちお)




日々の泡

塩原通緒(2004.2)


 『テニス』
 (ポール・ダグラス著・平凡社)より
新潮文庫『砂の器』がものすごい勢いで売れているそうであります。テレビの力は偉大なり。何故かつぎつぎと身の丈以上の役を割り振られ、知能犯や一流外科医や天才ピアニストを演じている中居正広と、来る役来る役すべてを有無を言わさず身の丈に合わせてしまう木村拓哉――この対照的な男優二人について深ーい考察をしようかと思ったけど、故ナンシー関女史のような鋭い指摘はできなそうなのでやめました。機会があったらまたいずれ。

代わりに今日見たばっかりの女の闘いの話をしよう。テニス全豪オープン女子決勝、21歳のジュスティーヌ・エナン・アルデンヌと、20歳のキム・クライシュテルスとのベルジャンズ対決。お互い、すんごい形相です。

ちょうど同じころに活躍を始めて、同じ年に全仏と全英でそれぞれグランドスラムの決勝に初進出した二人だが、同じベルギー人といっても、エナンはフランス語圏の南部出身、キムはフラマン語圏の北部出身で、言葉も違えば文化も違う。ジュニア時代の遠征で同室になったときには身振り手振りで会話したとか。キャラクターも、プレーヤーとしてのタイプも対照的だ。愛嬌のある天然お嬢のキムは、恵まれた体格から放たれるパワフルで伸びのあるショットで相手を押し込んでいき、生真面目で勝気な感じのエナンは、体は細いが気迫とキレのいいショットで勝利をもぎとっていく。

現在の女子テニス界は、無敵のヴィーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹にこの二人を加えたトップ4と、その他大勢とのあいだに越えられない壁ができつつある。したがってウィリアムズ姉妹がともに故障で戦線離脱中のいま、決勝は当然のごとくベルジャンズ対決となる。この二人を、メディアはさかんにライバル関係として書きたてる。最初は小国ベルギーから同時に二人も有望選手が出てきたのが珍しくて、「ベルギーの仲良し娘二人組みー」という可愛らしい取り上げ方をしていたが、二人が強くなるにつれ、互いのコメントの揚げ足をとって、「実は仲が悪かった!」という扇情的な方向にもっていくようになった。とくに親友というわけではないが、仲が悪いわけでもなく、互いにプレーヤーとして尊敬しあっている、というのが二人のオフィシャルな姿勢のようだ。本当のところは、当人たちしか知りえない。

初めての決勝対決は昨年の全仏で、二度目の対決が昨年の全米だった。どちらも、恐ろしく凡戦だった。なぜか。問題はキムにあった。なにしろ彼女は、昨年の全豪準決勝での対セリーナ戦、ファイナルセット5−2までリードして、あと1ゲームで勝てるところまでいきながら、そこで勝ちびびって(英語では choke といいます)逆転負けを喫したという不名誉な経歴の持ち主。エナンとの決勝の場でも、そのメンタルの弱さが出てしまった。過去の対戦成績はキムのほうが分がよく、ランキングも専門家の評価もキムのほうが上、決勝までの勝ち上がりもキムのほうが楽だったにもかかわらず、萎縮してふだんの力が半分も、いや十分の一も出せずに凡ミスを繰り返して、あっさりと敗れ去った。逆にエナンは大一番でふだん以上のガッツを発揮して、世界1位の座を手に入れた。

三度目の対決となる今回、状況はキムにとってやや有利なように見えた。
エナンは初めての第一シードで、勝って当然とのプレッシャーがある。
キムは追う立場にある上に、足首の故障も抱えているから、今回は名実ともにアンダードッグだ。ナッシング・トゥ・ルーズな状況は、それだけプレッシャーを少なくするはず。しかもキムの彼氏はオーストラリアの男子選手ヒューイットなので、全豪は彼女のホームのようなもの。観客は圧倒的にキムの応援にまわるだろう。

エナンは第一シードの重圧に耐え、アウェーの雰囲気に耐えてナンバー1を死守できるのか?
キムは三度目の正直でついにチキンハートを克服できるのか?
そして迎えた決勝戦。キムもさすがに大舞台に慣れたのか、調子はとくに悪くない。いいラリーが続きます。しかし、いやーエナン強いわ。細かった体がぐんとたくましくなっていて、キムに強打で振り回されても、それに負けない強いボールを打ち返して、最後にはウィナーを決めてしまう。エナンは危ない場面で踏みとどまれるが、キムは大事なポイントでミスを重ねる。いつまにか第一セットをエナンが先取し、第二セットも先にブレーク。

ああ今回もこれで終わりかあ、と思ったら、ここでやっとキムが開き直って大胆な攻めのショットを決めはじめた。エナンのほうにも、ここで初めて焦りが出てきたのだろう。その隙をついて、ついにブレークバーック! 勢いにのったキムが残りのゲームを連取して第二セットをとる。

いよいよベルジャンズ対決初のファイナルセットが始まった。これは先が読めませんなあ、と思っていたら、やはりエナンてすごい。第二セットをとられても気落ちすることなく、すぐさま気持ちを切り替えて果敢に攻めてきた。キムはその攻撃に耐えきれず、たちまち2ゲームもブレークされてスコアは0−4。これまでならここで完全に終わりだったけど、ところが今日のキムは違いました。あきらめずにボールを追いかけ、冷静かつ大胆に逆襲を開始して、スコアをタイにまで持ち込んだ。こんなに気迫のあるキムのプレーを見るのは初めてだ。しかしエナンも負けてない。終盤のキムのサービスゲームでふたたびブレークポイントを握る。そして次の一球、エナンのリターンが浮いてきたところをキムが恐れずにコート奥に叩き込んだ。ジャストアウト。エナンは次の自分のサービスゲームをきっちりキープして、三つめのグランドスラムタイトルを勝ちとった。

勝利の瞬間、膝をついてかがみこんだエナンの顔、本当に嬉しそうだったねえ。ここまで強くなるのに、血へど吐くまで練習したんだろうねえ。
最後の握手のときに勝者への祝福の笑顔を初めて見せなかったキムは、前の二回の敗戦が本当に悔しくて、今回こそは本当に勝ちたかったんだろうねえ。
実はちょっと飽きかけていたベルジャンズ対決だったけど、四度目が見たくなったよ。
それにしても、こんな面白い試合を地上波で放送しないなんて、もったいないねえ。前に放映権をもっていたテレビ東京、がんばれ。

(しおばら みちお)




日々の泡

塩原通緒(2004.3)

 一時期めっきり人気のなくなっていた児童書の「偉人伝」が、このところ勢いを取り戻しているらしい。

 呉智英は朝日新聞の短いコラムで、偉人伝の復活はたいへん結構、ただしそれは偉い人を手本にするためでなく、世の中には特別な人がいて、そういう人だけが偉業をなしうることを思い知るためである、と書いていた。昨今の平等主義教育のおかげで誰もが自分は何かできるはずだと思いこみ、その結果、やたらと自分探しに走ったり、自分が特別であることを証明しようと犯罪を犯したりする人間が出てきているからだ、という、かなり挑発的な意見だけれども、一理あるとは思う。

 ただし、最近の伝記は「昔ながらの教訓的な偉人ものが減り、身近な同時代人や、知られざる先人に光を当てるシリーズが書店をにぎわしているのだ」(読売新聞)という。各出版社の伝記シリーズ(自伝も含む)に新しく取りあげられている人びとを読売の記事から引用すると、レイチェル・カーソン、ケストナー、キング牧師、チャプリン、ダイアナ妃、イチロー、肥沼信次、寺沢国子、ココ・シャネル、オードリー・ヘプバーン、赤松良子、中村桂子、やなせたかし、堀田力。このラインナップだけ見ると、たしかに偉人伝というより、書籍版「知ってるつもり?!」という様相である。

 志の高い人びとの多彩な生き方を紹介するのが伝記の新しいトレンドなのなら、多彩な職業を紹介した『13歳のハローワーク』が売れているのと同じ文脈なのかもしれない。児童書が売れるというのは、子供が自ら選んで買っている場合もあるだろうが、それ以上に、親が子供に読ませたいと思って買ったり、学校が図書室に備えるために買ったりする分のほうが圧倒的に多いはず。いまの児童書の作り手や買い手(たぶん私と同じぐらいの世代)にとっては、こういう人びとが身近な「偉人」であり(私にとってもエジソンやキュリー夫人よりは身近に感じる)、自分が真に尊敬できる人の伝記を子供に読んでもらいたいのだろうと思う。だから、当の子供が野口英世や二宮金次郎には興味を示さないけれどレイチェル・カーソンやキング牧師には感動する、というわけでは必ずしもないのでは。実際のところ、子供はこの新・偉人伝を読んでるんだろうか。そして、どう感じているんだろうか。

 私の場合、子供のころに「偉人伝」をいろいろ読んだ記憶はあるが、とくに感銘を受けた覚えはない。「尊敬する人は誰ですか」と聞かれても誰一人思いつけなかった。でも、そのころの自分にロールモデルがいたらどうだっただろう、と思うことはある。好きな「偉人」はいなかったが、好きな俳優や歌手やスポーツ選手ならいた。でも、その人たちの素の部分はまったくわからなかった。いまは、そういう人たちが何を考えて、どんな努力をしているのかが情報として入ってくる。怠惰な自分にはとうてい耐えられそうにない苦しいことを、この人たちは受け入れて実行しているのだなあと、その「偉さ」がよくわかる。子供たちがそういう努力を知って、同じことをできるかどうかはともかく、めざしていくのは悪いことではないと思う。伝記はそのきっかけになるかもしれないし、浜崎あゆみや中田英寿なんかのインタビュー記事だって、同じ効力があるんじゃないか。経路はどうあれ、謙虚で、なおかつ志の高い子供が増えるといいな――というのは大人の勝手な願望か。

(しおばら みちお)




日々の泡

塩原通緒(2004.4)

 私には前々から一つ思っていることがありまして、自分ではそれほど奇矯な意見だとも思わなかったのですが、あまりにも賛同者が少ない上に、先日ある鋭い友人から「それ十人に九人はわからないよ。残りの一人もあとでじわじわわかってくる程度だよ」と言われてしまったものだから、本当にそうなのか広く問いかけてみたくなりました。

 それは、中居くんのスマップ解散後の身の振り方についてです。

 彼はソロシンガーになればいい、と私は思うのです。

 まず彼は、歌が好きです。自分でもそう言っていたし、本当に好きな歌を歌っているときの彼の様子を見ればわかります。

 さらに彼には、音程ない、音域ない、音量ないという余人に代えがたい特質があります。正統派の歌手にとっては致命的な特質かもしれませんが、心から歌で伝えたいことがある場合、この不安定さが時として尋常でない迫力を生みます。

 そして彼には、そういう「伝えたいこと」があるような気がするのです。あくまでも想像にすぎませんが。それを私が感じたのは何年も前、ある深夜番組のゲストに出ていた彼が誰か別の人の歌を熱唱していたときです。歌もド下手、演奏もド下手で知られるロックバンド「ニューオーダー」のライブを初めて体験したときに匹敵する衝撃でした。聞く者にこれほど緊張を強いれる歌手はそういるものではありません。気持ちいいだの癒されるだの、そんな甘やかしは許してくれません。

 高校時代の友達十人ばかりと飲みに行ったとき、「あの緊張感がいいんだよ〜」と私が自説を披露すると、「そんな緊張いらねーよ!!」と全員に却下されました。

 以前、彼が野球の始球式で「君が代」を斉唱して世間から嘲笑されるという出来事がありました。

 彼は身の程をわきまえていないのでしょうか?

 いいえ、とてもわきまえていると思います。だからスマップで歌うときは音を外さないようにと必死になるあまり、ぜんぜん人の心に響く歌が歌えないのです。

 でも、ソロになればそんな心配をする必要はありません。好きな歌を好きなように歌えばいい。彼に作曲能力があるのかどうか知りませんが(たぶんないでしょう)、自分で作れなければ好きな作曲家に作ってもらえばいいのです。そして思いのたけを込めて歌う。全国区的な人気は出ないでしょうが、必ずやコアなファンを獲得できると確信します。

 これはウケを狙って書いたのではありません。私は真面目です。どこかに賛同してくれる人はいないでしょうか。

(しおばら みちお)






日々の泡

塩原通緒(2004.6.11)

  6月10日。朝日新聞の第一面を見て、私は言葉を失った。二つ折りになった新聞の上半分の中央に、花柄をあしらった上下白の服を着て楽しげにうちわを振る男女の写真が載っている。折りしも梅雨入り直後、東レの雨ガッパの新作発表会ですか? と思って新聞の下半分を開いたら、なんとこれがアテネ五輪の開会式用ユニホームだったのだ。……憤死しそう。

 デザインは高田賢三。制作はユニクロ・ブランドのファーストリテイリング社。テーマは「SHOW YOUR COLORS.〜あなたらしさを、思うぞんぶん発揮してください〜」だそうである(詳しくはこちらをご参照ください)。コラ、賢三! このデザインは「あなたらしさ」じゃなくて「オレらしさ」じゃないかよ! この安っぽいうちわはなんですか! オリンピックは健康ランドじゃないんだぜ! これならユニクロ店舗で売ってるカジュアルウェアのほうがよっぽどいいよ。

 日本の五輪開会式用の服装といえば、前回のシドニー五輪での虹色マントが記憶に新しい。あの悪目立ちするマントは相当の不評を買ったはずだが、今回の新作を見るかぎり、JOCはまったく意に介していなかったようだ。個人的には、あのマントはたしかに珍妙だったが従来の紅白ダサダサスーツを脱したいという気概だけは感じられ、その点のみで良しとした。しかし今回の式典用公式服装を見ると(上記サイト参照)、依然として日の丸カラーの呪縛から解放されていないことがわかる。開会式用の花柄コートも、ふと考えてみればやはり白地に赤なのだ。

 ニッポン伝統の紅白衣装がなぜダサいのか。カラフルな虹色マントがなぜダサいのか。これについては酒井順子が『容姿の時代』の「着衣編――ダサい」で適切に説明している。かいつまんで言えば、ダサい=地味、カラフル=センスが良いという大きな勘違いの上に、平凡を避けたい、メッセージを込めたいなどの無用な意気込みが合わさった結果、常識を超えたダサさのきわみに着地してしまうのである。(酒井順子はこのダサみを解説したあと、さらに嫌味な結論にもちこんでいる。)

 JOCの感性のダサさについては、私ももう仕方がないかと考えている。しかしどうにも悔しいのは、ダサいダサくないという以前に、日本の開会式用ユニホームには運動選手に対する敬意が完全に欠落しているということだ。虹色マントにしろ花柄コートにしろ、誰がどこで何のために着る服なのかをまったく念頭においていないように思われる。

 運動選手にいちばん似合うものは何か。もちろん運動着である。腹のたるんだおっさんや貧相なオタクが着ていたら、ただみっともないだけのジャージだが、ジャージを着て格好よく見えない運動選手はいない。どうして彼らに最も格好よく見える服装をさせてやらないのか。一流の運動選手が鍛えあげられた身体美を競いあう場で、なぜこのような道化じみた格好をさせられなければならないのか。不憫でならない。

 いまの日本の運動選手の多くは、男女を問わず、自分の身なりにとても気を遣っている。自分に何が似合うかもよく知っている。試合中のユニホーム姿はむちゃくちゃ格好いいのに私服に着替えたとたん「どうしちゃったんですか?」となってしまうのは、むしろ西洋の方々に多いくらいだ。日本の一部のゴルファーや野球選手が派手なプリントシャツに金鎖のヤーさんファッションで闊歩していたのはもう何年も前のこと。いまではアスリートのスポーツウェアの着こなしが街で若者に真似されているのである。

 シドニー五輪のマントは当日まで未発表だったため、まさしく「不意打ち」で反対のしようもなかったが、今回は開会式当日までに多少の間がある。そのあいだに世間での不評は高まるだろうか? マスコミはそれを取りあげるだろうか? JOCは何らかの返答を出すだろうか? ありえないとはわかっていても、変更の英断が下されることを願わずにいられない。

(しおばら みちお)






日々の泡

塩原通緒(2004.7.1更新)



『イタリア協奏曲』




DVDも出ています


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 先月、鈴木先生がネットワーク・ウォークマンについて書いていらっしゃいましたが、私も携帯音楽機器をMDウォークマンからMP3用のシリコンオーディオプレイヤーに切り替えました。カセットテープ時代の元祖ウォークマンからCDウォークマン、MDウォークマンと長年ソニーさんのお世話になってきましたが、今回は他社に浮気です。

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 話はズレますが、会社名に「さん」をつけるのは本来おかしいんだってね。読売新聞の「日本語の現場」にハッキリ書かれておりました。謎のオトナ語のひとつだろうとは薄々感じていたけど、標準的な日本の会社員やってたから、すっかり癖になっちゃった。 
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 いわゆるMP3プレイヤーにはシリコンタイプとハードディスク(HDD)タイプがありまして、シリコンタイプは小型・軽量、構造的に音飛びがありえないという利点があり、一方のHDDタイプ(有名な iPod など)は容量が大きく、たくさんの曲を持ち運べるのが利点です。鈴木先生ご愛用のネットワーク・ウォークマンも、シリコンオーディオプレーヤーの一種ですね。ただし違うのは、音楽ファイルの圧縮形式です。どちらもCDに入っているオリジナルの音楽データ(WAVE)を圧縮して小さいサイズにしているわけですが、ネットワーク・ウォークマンはソニーが開発した「ATRAC3」という圧縮技術を使っています。MDの圧縮技術「ATRAC」を発展させたもので、MDと同じ音質でありながらサイズは半分ぐらいになり、同程度の圧縮率であればMP3より音が良いという説もある。それぞれの形式に対応したプレーヤーでなければ再生できないので、私のMP3プレーヤーではATRACファイルは聴けません。普及度でいえば圧倒的なMP3に、ソニーは敢然と対抗していると言えましょうか。かつてのベータ対VHSの闘いを見るようですが、音楽データの圧縮形式には他にもマイクロソフトのWMAなどさまざまなものがあって、各プレーヤーも対応ファイルを増やしているようだから、これからは互換性がどんどん高まっていくかもしれません。技術競争の世界も奥が深いです。

 さて、私が買ったのは韓国のコウォンシステム(Cowon Systems)という会社の「i AUDIO 4」という製品です。バーテックスリンクという日本の会社が販売しています。数あるMP3プレイヤーのなかでも音が良いという評判を聞いて購入しました。他の製品と聴き比べたわけじゃなし、それほど耳に自信もなしで、本当に良いのかどうかよくわかりませんが、私はこれで充分に満足でございます。いろいろな音質調整機能がついているので、低音を強調してみたり、サラウンド効果を試してみたりと、最初の数日はずいぶん楽しめました。ついでに、このプレイヤーについているイヤホンはなかなか高性能のものらしく、たしかに従来使っていたイヤホンと聞き比べると、それまで聞こえなかった音が聞こえてくる。いまごろ知ったのかと言われそうですが、イヤホンによってこんなに差があるとは知りませんでしたねえ。メモリは512MBあるのでアルバムが6枚から8枚ぐらい収録でき、パソコンとのファイルのやりとりはエクスプローラでドラッグするだけのお手軽さ。そして何より、音飛びしないのが有難い。

 これを使い始めてから何度かファイルの入れ替えをしましたが、先月から入っているアルバムのひとつが、バッハ&グールドの『イタリア協奏曲』です。鈴木先生のまねをしたわけじゃなく、これはほんとの偶然です。古典音楽にはとんと疎い私ですが、このアルバムは昔見たすてきなフィルムを思い出させる特別な一枚となっております。

(しおばら みちお)






日々の泡

塩原通緒(2004.7.1更新)

 朝日や読売には載らなかったと思うのだけど、産経新聞にこんな記事が出ていたらしい。ヤフーニュースの社会面で発見しました。

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オレのロックと違う!! コンサートを妨害、逮捕  横浜

 ロックコンサート会場の火災報知機を押したとして、神奈川県警港北署は、威力業務妨害の疑いで、埼玉県東松山市、派遣社員、×××容疑者(三六)を逮捕した。

 調べでは、××容疑者は二十四日午後四時ごろ、横浜市港北区の横浜国際総合競技場で開催されていたロックコンサート「THE ROCK ODYSSEY 2004」を中断させようとして、会場の八カ所の火災報知機のボタンを次々と押した疑い。調べに対し、「ロック歌手の稲葉浩志さんのステージをきっかけに、自分の考えていたロックと違うという腹立ちが爆発した」と供述しているという。コンサートは二十四、二十五の両日に開催。二十四日には米ロックの大御所「エアロスミス」などが出演していた。(産経新聞)
[7月27日4時2分更新]
(容疑者の名前は伏せ字にしました by 筆者)


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うわっはっは。笑っちゃいけないんだけど、つい笑ってしまった。
いちおう背景を説明しておくと、
このロックコンサートは、おもに海外大物ミュージシャンで商売しているウドーという呼び屋さんが夏のロックフェス市場に新規参入して行なった催しで、とにかく集客力のありそうな有名どころが国内・国外からたくさん集めれらておりました。
ロック歌手の稲葉浩志さんというのは、日本でとーっても売れている「B'z」というバンドのボーカリストで、いまはバンドが活動休止中のためソロ活動をしています。
で、この B'z っていうのが、どうも通なロックファンからは「ロック」と認められてないらしいんだね。
そこにこんな事件が起こったものだから、つい笑ってしまったわけ。
このお騒がせの36歳が、そういう熱い(=痛い)ロックファンなのか普通の愉快犯なのか知らないけれど、八カ所も火災報知器の位置をチェックしてるあたり、突発行動じゃなくて最初から狙ってたとんでもない奴かもしれませんねえ。
ちなみに B'z や稲葉さんのファンサイトでは、稲葉さんに B'z と同じものを期待してもしょうがないでしょ、そうそう、バンドとソロは違うんだから、という論調でこの件を語り合っていたとか。うーん、これってそういう事件だったんだ、と私は目からウロコの思いです。

ともあれ、コンサートは中断することもなく無事に最後まで進行したようです。よかったですね。
私はこの週末、フジロックフェスに行ってまいります。

(しおばら みちお)


(本文とは関係ありませんが……)

これこそオレのロック(?)
翻訳者と編集者による趣味のロックバンド、
The New Book-burn Addicted Band。
ヴォーカルはミステリー翻訳家の田口俊樹さん
(六本木ABBEY ROADにて)