牧人舎【日々の泡】塩原通緒2007
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日々の泡

塩原通緒(2007.2.6更新)


どうもみなさま、ご無沙汰しておりました。
新年のご挨拶が遅れてしまってすみません。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

私事ですが、この一月に父が他界しました。
人と同じことが嫌いで言いたいことはずけずけ言う、そんな好き勝手に生きてきた親父が天寿をまっとうできたのも皆様のご理解とご厚情のおかげ、とは葬式の喪主挨拶での兄貴の言葉。ええまったくそのとおり、と末っ子の私も思います。

子供としては、いいことも悪いことも、いろいろと教わるところの多い人でしたが、妻となったうちの母にとっては苦労も多かっただろうと察せられるわけで、これはよそ様に言うことではないけれど、母ちゃんには父ちゃんのぶんまで、さらにしぶとく元気で長生きしてほしいと思っています。

三月には、京都のお寺に納骨に行ってまいります。
きっと北野の梅がきれいに咲いていることでしょう。

写真は京都随心院の梅。写真提供サイトより

(しおばら みちお)





日々の泡

塩原通緒(2007.3.3更新)

近況三題


春近し

少しずつ、寒さが和らぎ、日が伸びて。
窓の外の桜並木も、ほんのりピンク色になってきたような。
もう1ヵ月もすれば、こんな感じに。


四年前に写した桜。使えるものは使い回す。


「180分で10失点」

やはりレッズはネタチームであったか。
昨年Jリーグの最終節でガンバ大阪に勝って初優勝を果たし、
今年の元旦の天皇杯決勝でもまたガンバに勝っちゃって優勝し、
えらく強くなったもんだと感慨にふけっていたら、いきなりこれだよ
遠征先のオーストリーで、バイエルン・ミュンヘンに45分で3失点……。
これはまあしょーがないとしても、
宮本が移籍したザルツブルクにも45分で3失点……。
帰ってきてからのゼロックス杯でもガンバに90分で4失点……。
みごとにリベンジされちゃってんのね。
でもレッズはこれぐらいがいいんじゃないの、と思ってしまうのが悲しい性。

ま、ガンバも相当のネタチームだと思うけどね。
クラブ名の由来からして駄洒落だし。
やってるサッカーはレッズなんかより断然美しいんですが。
ちなみに西野監督のご実家は浦和です。


ナイスキャスティング

ドラマ「愛の流刑地」が今月いよいよ放送されるそうで。
昨年の夏、このキャスティングをちょこっと考えたのだけど。
なんとヒロインは高岡早紀!大当たりじゃん(自画自賛)。
さすがにトム・クルーズはなかったか(残念)。



(しおばら みちお)







日々の泡

塩原通緒(2007.5.8更新)

So It Goes.

 なんだかなぁ、と最近思ったのは、カート・ヴォネガットが死んだのに新聞の扱いはずいぶん冷たいんじゃないの、ということ。読売も朝日も、訃報が載ったのは社会面の下の死亡欄だし、作家や識者による追悼文も出ない。決して文豪と呼ばれるような人ではなかったが、一昔前には一部でたいそう人気があった人だと思うのに。まあ、このところはとんと名前も聞かなくなっていたし、私も長いこと新刊が出ているのかどうか知らない。

     ***

「人生について知るべきことは、すべてフョードル・ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の中にある……だけどもう、それだけじゃ足りないんだ」
と、かつてヴォネガットは書いたけど、いまはもう、+ヴォネガットだけじゃ足りないのかね。

……などと思っていたら、数日後に朝日には巽孝之の追悼文が出たけれど。

     ***

 上記の引用は、うろ覚えだったのでグーグルで検索した。そうしたら、かなり簡単に、かなりたくさんヒットした。ネットって本当に便利。出典は『スローターハウス5』だった。この小説が、やはりヴォネガットの代表作とされているのだろう。新聞の死亡記事でもそう書かれていた。私も読んだ。この前後の作品はひととおり読んだと思う。そのすべて、例によって中身はほとんど忘れているのだが、濾過された記憶のみで言うと、物語としていちばん面白かったのは『タイタンの妖女』だ。ラストシーンが美しすぎて涙が出た。これに比べると『スローターハウス』も『猫のゆりかご』も、ちょっとメッセージ性が勝ちすぎているように思うのである。
 個人的な意見はさておき、この検索をしたとき、ずいぶん多くの人がブログでヴォネガットの死を悼んでいることがわかった。

     ***

「人は二度死ぬという/まず自己の死/そしてのち/友人に忘れ去られることの死」
――もしそうなら、ヴォネガットの二度目の死は、まだとうぶん先のことになりそうだ。

     ***

 この引用は、ヴォネガットからではない。かなり昔に聞いた言葉で、数年前に三谷幸喜が弔辞で使ったときに、あ、これ知ってる、と思ったものだ。この機会にまた思い出したので、グーグルで検索してみたらすぐわかった。ネットって本当に便利。私の記憶の出所は『トーマの心臓』だった。ただし「〜という」という伝聞の書き方のとおり、べつに萩尾望都のオリジナルではなく、さまざまな文章バージョンであちこちに引用されていた。でも、この考え方のおおもとの出所はわからなかった。ともあれ、ネットをひとめぐりして再会したヴォネガットの数々の名言は、まだまだ現役で生きられると思うよ。

     ***

「そういうものだ」――彼の作品中の常套句のひとつである。人は死ぬ。そういうものだ。これが原文では、So it goes だった。音数も同じで、頭韻まで踏んでる名訳だったことに、感嘆したのを覚えている。



(しおばら みちお)







日々の泡

塩原通緒(2007.7.2更新)

お墓の話

 以前こちらに「京都に納骨に行く」と書きましたら、数人の知り合いから「お父さんって京都の人だったの?」と聞かれました。いーええ。親は父も母も埼玉県人ですから、上方に親類縁者はおりませぬ。ただ父は、プチ財をなした関東の田舎者にありがちな「京都に別宅をもつ」という夢をもっていたみたいで、私が子供のころに洛中の住宅街にマンションの一室を買ったんですね(いまはもう手放してますが)。そんなわけで、親は昔からよく京都に遊びに行ってました。その流れで、二十年ぐらい前でしょうか、あるとき母親が石庭で有名な竜安寺を見に行ったら、ちょうど新しく建てる納骨堂に入る人の募集をしていたそうで。竜安寺は臨済宗のお寺さんですが、宗派に関係なく誰でも入れて、永代供養してくれると。で、次男の父はそこを買ったわけですね。「年に一回ぐらい墓参りがてら京都見物に来るのも悪かねーだろ」と生前言ってました。そうね。お金かかるけどね。回遊式の優美な庭園の奥にひっそりと建つ小ぢんまりとしたお墓のロッカー、たしかにいいところでしたよ。しかし中学高校の修学旅行で来るようなところに親の骨があるかと思うと、なにやら不思議な気がしますね。あたしのミーハースノッブ心は父ちゃん譲りかもしれんな……。

 そんなミーハースノッブなあたしのうちも、分家なので、いずれはお墓を用意しなければなりませぬ。少し前に「都立霊園募集開始!!」とかいうチラシが新聞にはさまっていたので、おお青山霊園かあ、谷中霊園もいいよねえ、などと、自分の死後はどうでもいいという普段のポリシーに反してちょっと興味がわいてしまいました。で、軽く調べてみたところ、その敷居の高さに_| ̄|○。公営だから倍率が高いだけで値段は安いのかと思っていたらとんでもなかった。やはり東京の土地代は半端ではありませんわ。それに、そもそも納めるべき骨をもっていないと申し込めないのでありました。このシステムは、自分のお墓を生前に用意しておこうとする人のためのものではないのですね。そういうのは家制度がなくなってからの新しい風潮なのでしょうか? 埋葬の歴史って全然知らないけど、哲学宗教の関わるものだし、奥深そうだなあと思います。

 最近「千の風になって」という歌が流行っているそうで。昨年の紅白で火がついて、中高年を中心にじわじわと人気を博しているとか? まあ私も実家に行ったら母親が聴いていたんで初めて知ったわけですが。この歌詞が、なかなかすごいんですよね。「私のお墓の前で泣かないでください/そこに私はいません/眠ってなんかいません/千の風に/千の風になって/あの大きな空を吹きわたっています」。この歌が大流行なのを受けて、仏教関係者が、いままで俺たちが教えてきたことは何だったのか、とガックリしているという話を聞きましたが、そりゃそうだよねえ。こりゃ従来の葬式仏教に対する過激なノーだもの。
 私は基本的に人は死んだらそれで終わりじゃないかと思っていて、仏教も本来そういう考えだと理解してるんですけども、それでもやっぱり日本人だからか霊魂がないとは言いきれなくて、幽霊は怖いし、死んだ人を粗末にしたら罰当たりな気がする。その点、日本の仏教の弔いや供養ってよくできてると思うんですよね。だてに長年やってきてないとでも言いましょうか。故人をしのび、お互い浄土でまた会いましょうと祈ることで、残された人が心を落ち着けられる、そういう優れた安心装置になってるんじゃないでしょうか。
 ところが、この歌は根本的にそうじゃない。大好きだった人が死んでお星様になって私を見守ってくれるの、というのならお星様が遠い天空にあるぶんだけわかるような気もしますが、この歌のように霊魂が自然界のありとあらゆるものに姿を変えて直接的にまとわりついてくるのは、ふと考えると、ちょっと薄ら寒いんですが。霊魂が帰ってくるのはお盆くらいでいいんですが、私としては。いまのみなさんはこのほうが落ち着くのでしょうか?――と単なる歌の流行と死生観の変化を単純に結びつけるのが間違いだとは思いますけれども。

 なんか最近は暗めの話が多くてすみません。自分ではとくに暗いとも思ってないんですが、陽気な話でもないですよね。私としても、何かきらきらしたものに出会いたいんですが、ここんとこどうも出会いがなくて。トシかなあ。

(しおばら みちお)







日々の泡

塩原通緒(2007.8.2更新)





お買い物!


 心ときめくものがないときに、手っ取り早く高揚感を与えてくれるコト――そう、それはお買い物。

 新しいモノを手にした喜び(ドーパミン?)と、買って失敗だったらどうしましょうの不安(アドレナリン?)とで、手軽にプチトリップですわ。

 今年は夏用のちゃんとしたお洋服を買おう!と思っていたのに、気がつけばバーゲンにも出遅れて、店はすっかり秋物一色。服と靴は、基本的に通販では買わないことにしてるので、夏服はまた来年のお楽しみだなぁ。

 ということで、新しいお仕事グッズを買いました。

 まずは、わずか一センチの厚さながら、あらゆる方向に体圧を分散して疲れを感じさせないという触れ込みのマット。なにしろ安物の椅子に毎日ずうっと座ってるもので、自前のクッションの下に座布団敷いてても、やっぱりお尻痛くなっちゃうんですよね。
 写真のように見た目は地味でも、その素材は、驚異的な衝撃吸収力と圧力分散性能を実現する、イギリスの医療分野から生まれた「人工筋肉」なのだそうだ。すげ。期待しようじゃないか、その効果に。

 それと、もう一つ。このところ疲れ目が激しいもので――PCモニタをブラウン管から液晶に変えろとか、老眼入ってるかもしれないから眼科に行けとか、いろいろアドバイスいただいてるんですが――とりあえずOAグラスを。
 紫外線や赤外線などの自然界の有害光線のほか、パソコン画面から発せられる青紫光線とD線も60%カットしてくれるそうな。レンズの色はグレー。オレンジやイエローのレンズは青紫光線を大幅にカットしてくれるけど、D線のカット率が下がるので、かえって目が疲れちゃうんだって。こちらも期待しちゃいますよ、その効果に。
 写真では白いとこばっかり目立ってますが、買ったのはマスクじゃなくてメガネですから。


(しおばら みちお)





日々の泡

塩原通緒(2007.9.3更新)


googleは2007年9月で9周年だそうです。画像は8周年記念のもの。
どうでもいいこと

 あの映画であの役をやってた俳優は誰だったっけ、とか、たしかに見覚えのあるこの一文はどこからの引用だったっけ、とか、べつに思い出せなくて困るわけでもないけれど、どうも引っかかってイライラする、という状況は、昨今、グーグルによってほとんど解決されるようになってしまった。これであとは、ふと口ずさんだメロディーがなんの歌だったか思い出せなかったときにネットで調べられるようになったら完璧だな、と思っていたが、すでにもうそんなサイトができていた。
 鼻歌検索サイト(俗称)の「midomi」では、パソコンにつないだマイクに向かって10秒ほど鼻歌を口ずさむと、それに合致する曲を探し出してくれるという。歌詞がわからなければハミングでもいい。アメリカ発のサービスなので日本語曲はまだ登録数が少ないらしいが、英語の曲なら、めちゃくちゃな英語で口ずさんでもかなりの高確率でヒットするらしい。すごいですねえ。もうここまできてたんだ。
 うちにはマイクがないので、実際には試せていない。たとえマイクがあったとしても、わざわざそれに向かって鼻歌を歌うのは、けっこう、いや、かなり、恥ずかしい気がするのだが、思い出せないイライラを解消するためには、そんなちゃちな羞恥心など吹き飛んでしまうのであろうか。それとも意外に楽しくて、部屋で一人えんえんと歌っちゃったりするのだろうか。新しい技術に、人はときに思いもよらなかった利便を見いだすからなあ。とりあえず、いまはまだマイクを用意するつもりはない。

 それにしても、この8月は暑かった。さすがに調子がだだ落ちで、持病のアレルギー性湿疹が発症した。外用薬は効果てきめんだったが、内服薬の作用で眠くなる。それで寝てしまうと、今度は夜の眠りが浅くなる。そして、いっそう昼間に眠くなる。リズムの乱れを律する鉄の意志が欲しい。


(しおばら みちお)







日々の泡

塩原通緒(2007.11.3更新)


すばらしい新世界

パソコンを新調しました。
マシンを買い換えるのは五年ぶり、モニタにいたっては十年ぶりでございます。 この世界はドッグ・イヤーだなどと申しますが、五年もたてば、スペックが桁違いになっているのでございます。 五年前にデルのマシンを買ったときにも同じことを書いた気がしますが、新製品の動作の速さには驚愕です。いろいろと世界が変わります。

覚え書きとして、九年前、五年前、そして現在のマシンの仕様の変遷を記しておこう。 CPU:200MHz → 1.60GHz → 1.80GHz メモリ:32MB → 384MB → 1GB ハードディスク:4.3GB → 40GB → 250GB 光学ドライブ:CD-ROM → CD-RW/DVD-ROM → DVD+/-RW

今回買ったのは、デルの法人向けビジネスモデルの「Vostro」です。
画像もつけておきましょう。黒が、いかにも「できるヤツ」って感じです。
パステルカラーのお洋服なんか着て相対したら怒られそうです。
ダークスーツか、白シャツ腕まくりでお相手しないと。
OSは、もちろんWindows XP Home Editionです(Professionalじゃなくてすいません)。
え。Vistaにしないのかって。しませんよ。
XPじゃセキュリティが弱いって?
そんな怪しげなサイトなんか行かないからいいんですよ。
なにがエアロですか。直感的な操作性? 洗練されたデザイン?
そんなものはアップルに任せときゃいいんですよ。
私はね、五年前にVAIOを捨ててDELLを取ったときから、おしゃれなPCライフとは袂を分かったんですよ。
インターネットエクスプローラも、ver.7をインストールしてみたけど使い勝手が悪いから即刻6に戻しましたしね。
パソコンなんて軽くて明快なのがいちばんです。
マイクロソフトは余計なことに手を出さず、高性能電卓屋の精神を貫き通してほしいものです。

……と言いつつ、じつはXPにした最大の理由は、いま仕事の途中だから。
これまでのパソコンも実家に送って並行して使う予定なので、いきなりがらりと仕事環境が変わってはまずいわけですよ。だから来年の春ごろには、あっさりVista使ってるかもしれません。いちおうVistaを載せられるだけのスペックにはしておいたし……。

しかし、このXP選択というのが、もはやなかなか難しいのでありました。
いま販売されてるパソコンは、ほとんどVista搭載なので。
デルの法人向けモデルを買ったのも、XPを選択できたからなんですね。
最初は、デルと同系統のヒューレット・パッカードにしてみようかと思ったんです。
でもヒューちゃんは、カスタマイズの柔軟性に欠けるというか、パッケージの種類が少ないんですよ。モデルによってはものすごくお得なんだけど、個人向け機種はVistaしか選べないし、法人向け機種はあれこれ変更してると高くなってしまう。
結局、デルりんの営業力に屈してしまいました。
余計な機能は取っ払って、部品をいくつかグレードアップして、19インチの液晶モニタつけて、七万円台ですよ! どっか偽装してるんじゃないかと疑ってしまいます。

モニタといえば、私これまで十年間、ソニーの17インチ・ブラウン管ディスプレイを使ってたもので、今回の変化はかなりの衝撃でした。
第一に、ブラウン管てほんっとうに図体でかかったんだなあ、と。
液晶にしたら机がスカスカですよ。デスク奥に設置したら画面がいっきに遠くなりました。
ついでに解像能力が上がって文字が小さくなったので、さらに遠距離感が増してます。
そして第二に、音がしょぼい、しょぼすぎる……。
そもそも私、液晶モニタにスピーカーは常設ではないことを知らなかったものですから、危うくスピーカーを別途購入することもなく音なしモニタを買っちゃうところでした。
ぎりぎりで気がついてスピーカーつきモニタに換えたんですが、いざブツが到着して、マシンの電源を入れて、ウィンドウズの起動音が鳴ったとき、腰が砕けそうになりました。
やっぱりソニー、音よかったんだな……。たしかにカタログ見直せば、出力数値が違うもんなあ……。
パソコンで音楽なんか聴かないし、DVDなんか見ないもんね、と思ってはいたけれど、ウィンドウズを立ち上げるたびに、この情けない音を聞くのは精神衛生上よくないわ、と最初は思ってたんですが、恐ろしいもので、三日もしたら慣れてきました。
現在スピーカーを買うかどうか思案中。せっかく広くなったデスクがまた狭くなっちゃいますしね。

さて、つぎは旧パソからデータを移植。 フォルダを整理して、初めてのDVD作成ソフトを試して、このさいだから各種フリーソフトもバージョンアップして……
と、まだまだ brave new world への興奮と苦難の道のりを紹介することはできるのですが、いいかげん長くなりそうなのでやめときます。
いじくりすぎて一時期インターネットに真剣につながらなくなったりとか、購入後数日でシステム復元とか、ずいぶん馬鹿なこともしましたが、いまはどうにか小康状態。
そんなんじゃ前と環境同じにした意味ないじゃん、とか言わないように。
また目新しいことに出くわしたら書きますね。ではでは。


(しおばら みちお)







日々の泡

塩原通緒(2007.12.5更新)


Manos Hadjidakis
 先月末、振付家のモーリス・ベジャールが亡くなりました。合掌。
 二十世紀バレエの数々の名作を生んだベジャールですが、やはり代表作は「ボレロ」と「春の祭典」でしょうか。私もこの二つは別格だと思います。
 初めてベジャールのバレエを見たのは1982年の来日公演。ま、テレビでなんですけどね。NHKで放映された『エロス・タナトス』と『魔笛』の二本、とくに前者は、画面越しでも十二分な衝撃がありました。小作品のオムニバスのような構成になっていて、その冒頭が「春の祭典」、締めが「ボレロ」でした。最初の出会いが素晴らしい傑作で幸運だったのでしょう。今でもこの演目がいちばん好きです。
 最初と最後の二つの名作はもちろん、ほかにも個人的にとても好きだった踊りが、いくつか思い出されます。

「アダジエット(Adagietto)」
 これも有名な作品です。ガラ公演でよく踊られてます。マーラーの五番に乗せた男性ソロの踊り。当時の私はヴィスコンティの『ヴェニスに死す』を見ていなかったので、以後長らく、マーラーの五番といえばこれでした。
 いまでも(たぶん)現役バリバリのダンサー、ジル・ロマンが、このときは若くて初々しくて、この役にぴったりでしたねえ。下のはジョルジュ・ドン版です。
http://www.youtube.com/watch?v=YCxs-AVKZbE

「アクア・アルタ(Acpua Alta)」
 そのころベジャールのバレエ団にはミシェル・ガスカールという踊り手さんがいて、この人がもう、本当にお天道様の下がよく似合うというか、かわいくて明るくてキラキラしたタイプの人でした。この人にナポリ民謡「恋する兵士」の心躍る音楽にあわせてはつらつと踊られちゃうと、いやがうえにも盛り上がってしまいます。
 のちに別のところで、これをジョルジュ・ドンが踊ってるのも見ました。彼にはすでになにやら神々しいイメージをもってたんですが、こういうアホっぽい役もすごく似合うんだ……と、その懐の深さに恐れ入ったものでした。そのさわりがこちら。
http://www.youtube.com/watch?v=GqlLliFST-4

 余談ですが、このビデオを楽曲名の'O surdato 'nnamuratoで検索したら、サッカー会場の映像がいくつか出てきました。見てみたら、ナポリのチームのサポーターがこの歌をスタンドで大合唱しているのでありました。ちなみに日本にはゴールを決めると阿波踊りを踊ってくれる選手がいますが。

「鳥」
 これは地味な作品なんでしょうか? このときの演目以外で見たことないです。原題もわかりません。最後の「ボレロ」の直前の、男性一人と女性数人によるエスニック風味の踊りなんですが、非常にかっこよかった。なにがって音楽が。作曲者はマノス・ハジダキスというギリシャの人で、ふつうギリシャの曲というと伝統楽器を使った楽しげな舞踊音楽を連想しますが、これは民族音楽っぽくはあるものの、もっと現代的で、なんとなくロックな感じ。
 この曲が気に入って、当時ハジダキスのレコードを探してみたわけですが、世界中の音楽があされるインターネットなんてなかった時代、当然ギリシャの音楽は、一部の大型店の民族音楽コーナーに数枚ある舞踊曲集ぐらいしか見つかりませんでした。
 そこでヨーロッパ旅行でギリシャに行ったとき、アテネのレコード屋で店員のお兄さんに「Manos Hadjidakis」と書いた紙を見せ、「この人のCDが欲しいんだけど?」といいかげんな英語で聞いてみました。お兄さんは、何ゆえ東洋の小娘がハジダキス?(←想像吹き出し)と一瞬けげんな顔をしたのち、にっこり笑ってCD棚の一角に連れてってくれました。さすがに本国、けっこうな枚数が揃ってましたが、なにしろギリシャ文字でさっぱり内容がわからないので、とりあえずジャケ買いした一枚が、こちらの本国版(いま初めてアルバムと各曲のタイトルの意味を知りました)。
 帰ってきて聴いてみて、「あの曲」はやっぱり入ってなかったのですが、この人が私の好みの作曲家であることはわかりました。「あの曲」は、いったいなんという曲なんでしょうね?
「鳥」のビデオは見つかりませんでしたが、同じギリシャのティオドラキスの曲を使った踊りなら見つかりました。これもいい作品ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=qu_3xfVd8b8

 とまあ、つまらない思い出語りをしてしまいましたが、要は、二十年以上たっても鮮明に覚えてるような経験をさせてくれてありがとうベジャール、ということです。思えば今年はエロス・タナトスな一年であったような気もいたします。来年はどうなるのかな? また引き続きよろしくお願いいたします。みなさまもよい年をお迎えください。

最後に宣伝です。
友達が作家になりましたので、ご紹介させてください。
久保寺健彦
『ブラック・ジャック・キッド』
新潮社第19回日本ファンタジーノベル大賞・優秀賞受賞作
『みなさん、さようなら』
幻冬舎第1回パピルス新人賞受賞作
学生時代から面白い御仁でありました。


(しおばら みちお)