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明けましておめでとうございます。
皆さんにとって、今年がよい年になりますように。 私の昨年は体調不良で散々でしたが、何とか誕生日を過ぎ、今年は70の大台にさしかかります。 父親が69歳であの世とやらへ移住したことを思うと、私にとって今年は未知の領域に挑むような気分です。 ともあれ、本年もよろしくお願い致します。 2004年元旦 鈴木主税
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ひまじんのよたばなし
閑 人 妄 語
鈴木主税(2004.3.1更新) |
![]() 『リスト:ピアノ作品集』3枚組 (POCG-3448/50) |
リストのピアノ音楽
このところ視力の低下がいちじるしい。自分でも気になって調べてみたところ、どうやら加齢の影響で白内障がかなり進んでいるらしい。いずれ徹底的に治療しなければなるまいと思うけれど、つい仕事に気を取られ、片目をこらして拡大鏡をのぞく毎日である。 仕事のあとの楽しみは、これまでたいてい好きな本を読むことだったが、使えるほうの目を酷使して日中を過ごしているせいか、夜はもっぱら音楽を聴いて無聊を慰める毎日がつづいている。しかし、これもいい機会だと思って、いままであまり熱心に聴こうとしなかった作曲家の音楽に耳を傾けることにした。たとえば、フランツ・リストやヤン・シベリウスの音楽である。どちらも通俗的な名曲の作曲者として、クラシック音楽に関心のない人でもメロディーに覚えがあるはずだ。リストなら「ハンガリー狂詩曲第2番」、シベリウスなら『交響曲第2番」はよく演奏され、いずれもポピュラ−・コンサートの定番だ。 ここで取り上げたいのはシベリウスではなく、リストのほう。ハンガリー人を父としドイツ人の母とのあいだに生まれたリストは、19世紀最大のピアニストとして知られ、前半生はヨーロッパ各地への演奏旅行をして過ごした。ちなみに、リストが師事した先生は、ピアノがチェルニー(ピアノを習った人にはお馴染みの作曲家ですね)、作曲があのサリエリだった(映画『アマデウス』をご覧になっていれば、サリエリがどういう人か、きっと覚えているでしょう)。 リストは womanizer (要するにプレイボーイ)として知られ、ごく若いときに同棲していたダグー伯爵夫人とのあいだに生まれた娘のコジマは(前夫の指揮者ハンス・フォン・ビューローのもとを出奔して)リヒャルト・ワーグナーの夫人になった女性である。つまり、リストはワーグナーの義父にあたるわけだが、コジマさんも父リストの遺伝子を濃厚に受け継いでいたようですね。そういえばワーグナーも女性関係の派手なことではリストに引けを取らなかった。 ところでリストの後半生を見ると、ピアニストではなく、作曲家としての活動が目立っている。作曲家としての大きな業績としては、交響詩というジャンルを創始したことだろう。「前奏曲」、「マゼッパ」、「オルフェウス」など多くの作品があるが、いまでは演奏会のレパートリーとしてあまり取り上げられないようだ。また交響曲として発表された「ファウスト」や「ダンテ」もどちらかと言えば交響詩に分類できる作品とも考えられる。その意味で、リストはのちに交響詩の傑作をいくつも書いたリヒャルト・シュトラウスの先駆として、音楽史に名を残していると言えなくもない。 |
![]() 『ファウスト交響曲』 (WPCS-10034) |
なんだか音楽史の概説みたいになってしまったが、リストの音楽をまとめて聴いて、私が何よりも興味をそそられたのは、同時代の作曲家の手になる世評の高い作品(特にオペラ)をピアノ用に編曲した仕事ですね。いちいち例をあげると枚挙に暇がないので控えるが、たとえば彼はワーグナーの主だった作品のほとんどをピアノ用に編曲している(ほかにも、ワーグナーと同年に生まれたイタリアの歌劇作曲家ヴェルディの主要なオペラを編曲しています)。 リストはピアノのヴィルトゥオーゾ芸術の完成者とされるだけに、自作のピアノ音楽ではいわゆる超絶技巧が目立ち、聴いていてピアノの曲芸みたいな部分にうんざりさせられることもあるが、編曲の仕事ではワーグナーの大管弦楽やヴェルディの美しい旋律を再現するため、自分が身につけたピアノのあらゆる技巧を駆使して原曲をかなり忠実に表現することに成功している、と私は感じた。ある意味で、リストが編曲でやったことは、われわれの翻訳に似た努力だったと言ったら我田引水のそしりを免れないかもしれないが、私はいま、リストの音楽をまとめて聴いて本当によかったと思っている。 * * * このHPの世話役をつとめている野中さんに、クラシック音楽のことを書くならディスコグラフィ−をつけてはどうかと言われたが、演奏に関する私の評価に権威があるわけでもないし、世上に流布している音盤をことごとくあさったわけでもないから、遺漏があることは免れない。だから聴いてよかったと思うものだけを記すことにする。 ピアノ音楽では、『リスト:ピアノ作品集』3枚組(POCG-3448/50)写真上がいいと思った。演奏はダニエル・バレンボイム。古い録音(1978-1982)だが、音質も悪くない。 管弦楽作品では、『ファウスト交響曲』写真下これも指揮はバレンボイムで、オケはベルリン・フィル、合唱がベルリン国立歌劇場合唱団で、テノールのソロがプラシド・ドミンゴという錚々たる顔ぶれ。1998年のデジタル録音も悪くない(WPCS-10034)。ついでながらバレンボイムは最近、ピアニストであるよりも指揮者としての活動が目立ち、特にリヒャルト・ワーグナーの楽劇の指揮に定評があり、バイロイトでもよく起用されている。 ほかに『ダンテの「神曲」による交響曲』がある。指揮はジュゼッペ・シノーポリでオケはドレスデン国立管弦楽団、女声合唱がドレスデン国立歌劇場女声合唱団。このCDには、イタリアの作曲家フェルッチョ・ブゾーニ(1866-1924)の『サラバンドとコルテージュ』が組み合わされている。(UCCG-3240) 先に、ハンガリー狂詩曲第2番がリストの作品で最もポピュラーだと書いたからには、ハンガリー狂詩曲を落とすわけにもいかないだろう。ハンガリー狂詩曲は全部で19曲あるが、もともとピアノ独奏曲として書かれたもので、最も有名な第2番の管弦楽への編曲はリストと同時代にフルート奏者および指揮者として活躍し、『ハンガリー田園幻想曲』の作曲者として知られるドップラーが協力したとされている。ともあれ、リストのこの作品はすべてを聴く必要もあるまい。だから演奏の良し悪しではなく、お買い得のアルバムをあげておこう。『ハンガリー狂詩曲集』クルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏で、1番から6番までが収録されている。これはいわゆる廉価版で、録音は1984年だが、音質も聴くに耐えないほどひどいものではない。(UCCP-9026) (すずき ちから) |
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ひまじんのよたばなし
閑 人 妄 語
鈴木主税(2004.4) |
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沖縄のインテリ
必要があって、沖縄で弁護士を雇うことになった。と言っても、別に刑事事件とかかわったわけではない。民事も民事、私の死後の個人的な問題を処理する法的文書を用意したいと思ったのが動機、つまり遺言状の作成である。 幸い、私が仕事場にしている沖縄テレビの建物のなかに事務所をかまえている弁護士がいた。それで管理人に紹介の労をとってもらい、下のフロアの弁護士事務所を訪ねた。 石川さんというその弁護士は沖縄の生まれだが、東京の大学で学んで戦後に帰郷し、弁護士事務所を開設したという。専門は corporate lawyer というから、沖縄でも大企業に数えられるゼネコンなど数社が入居しているこのマンションは、弁護士事務所の立地条件としては好都合な場所のようである。 初対面の挨拶がすんで、当方の依頼を快く引き受けてもらい、必要な相談がすんでから、話は私的な事柄を含む雑談になった。名刺代わりに持参した私の著書(『職業としての翻訳』)のページをパラパラめくりながら、石川弁護士は週に一度、数人の仲間が集まって、原書購読の勉強会を開いているのだと言った。 メンバーは同業の弁護士や琉球大学法科の卒業生で司法試験を目指している人たち、それに弁護士の仕事と深いかかわりがある何人かの公証人だという。もっとも勉強会とは名ばかりで飲み会になってしまうことも多い、と彼は苦笑いしながら白状したものだ。 石川さんは白髪まじりで私と同年配に見えたが、あるいは一○年くらい若いのかもしれない。それにしても偉いものだ、初老の身で、多忙な業務の合間に外国語の勉強をするなんて、なかなかできることではない。これまで、私が沖縄で知りあったのは、飲み屋で顔見知りになった人ばかりだったから、このたびの出会いは私にとって非常に新鮮だった。石川さんの話しぶりは穏やかで、言葉も丁寧だったし、「なんでかねー」とか「だっからよー」というようなウチナーンチュの決まり文句は決して口にしない。 初対面は一時間足らずで終わった。帰りがけに、石川弁護士はこう言った。「よかったら、こんど私どもの勉強会にお出でいただいて、いろいろ教えてもらえたら有難いけれど、いかがですか」。単なる外交辞令かもしれないが、私は彼から誘いの声がかかるのを楽しみにしている。 (すずき ちから) |